今回は、「コンサート本番前の精神状態について」、前回に続き後半になります。

最高のパフォーマンスを発揮するため、目の前のコンサートだけに集中する精神状態を作るため、どう自分の中で調整したか。私の場合、それは「ヨガ」との出会いがきっかけでした。もちろん人それぞれに方法があると思いますが、私の体験が少しでも参考になればと思いますので話してみますね。

私にはけっこう深刻に悩んだ時期があって「なんのために俺は音を出すんだろ?」ってところまで行ってしまったことがありました。「これは何か手を打たなきゃやばいな…」と思っていたところ、不思議な出会いで、たまたま髪の毛を切るために美容室に行ったんですが、目の前に置いてある雑誌をぱらぱらめくってみるとヨガの記事が載っていたんです。

「へぇー、ヨガってどんなもんなのかな?」みたいな軽い感じで読んでみたら、「今の俺に必要なのはヨガではないのか！！」って、私の心に訴えてくる何かを感じました。

一般的なヨガのイメージだと、つらいポーズをとったりする感じもあるかもしれませんが、僕に必要なのは瞑想でした。それからヨガの本を読み漁り、瞑想によって自分の精神状態をどう作るかってことに着目し瞑想を始めたんです。

以降、家に帰ったらヨガマットを出し、食事前に30分の瞑想をやるようになりました。それは自分の脳にあるイメージや思いに対して、何が必要で何が不要であるかを整理整頓するとともに、将来の自分がどのようなエンジニアになっていたいかをイメージするようにしました。これはコンピュータでいうとハードディスクの断片化の最適化を行うようなイメージでしょうか。脳の記憶の断片化を片付けていないと睡眠の質が悪くなる。するとネガティブなことばかり考える。全てをつかさどるのは脳、ってことは今では当たり前に言われてますよね。

といっても、ライブ本番前に30分、時間をとって瞑想ルームに鎮座する…という訳にはいきません。何年か瞑想を続けた結果、やり方がわかると、わずか数分ですっと脳の断片化の最適化を行えるようになるんです。

目を閉じ、頭の中の不安要素を別の箱の中に入れるイメージを描くんです。そしてその箱の鍵を閉める。「今日、コンサートが終わったらどこで打ち上げしようか?」みたいな余計な考え事も含め、全て箱に閉じ込めるんです。すると本番中は目の前のパフォーマンスだけに集中し、次にやってくる1小節をどう処理をすればいいかということも、いちいち考えるわけでなく、無意識に手が動くよう自動化されます。そして最大限の集中力をステージの音だけに注ぎ込むことができるようになれました。

そこで必要なのはやはり「健康」。そこに行き着きます。

週末にコンサートが控えているなら、本番までの過ごし方をコントロールして体調をベストに持っていく。そういうことをとても大事にしています。教えている音楽大学で、アルバイトばかりしていて、その後飲みに行っちゃって朝起きれません…みたいな学生を見かけます。本来はしっかり授業を受けなければならない。ですので、レッスンの前後にはアルバイトを入れないように指導しています。レッスンも本番と同じです。集中力を高め、「いい音」を感じて欲しいからです。